『モンブラン』
ファビオ・ヴィスコリオージ 著
大林 薫 訳
定価:本体1,800円+税
四六判 約240ページ
ISBN 978-4-9908091-7-1
C0097
“ポケットに入れて、背中にかついで、心に思って、僕はモンブランを連れていく。”
1999年3月、アルプス最高峰モンブランのふもと、フランスとイタリアをつなぐトンネルで火災事故が発生しました。 著者ファビオ・ヴィスコリオージの両親は、そのモンブラントンネル火災事故で亡くなりました。突然の大惨事から10年以上を経て、ようやく書きあげた当時の衝撃、両親の思い出、家族の記憶……。著者自身の心の再生を綴った物語です。
突然、事故や災害の犠牲者、被害者遺族になった。愛する人々の死を信じられないまま、気持ちの整理がつかないまま、時間だけが過ぎてゆく。怒りや悲しみはぶつける先が定まらないまま、消化不良状態でからだのどこかに残っている。ヴィスコリオージは、なすすべもなくただ目の前のさまざまなことをやり過ごしきた、あの時、この時を綴りました。
装幀家、司修氏による表紙・カバー・帯デザインです。
【著者】
ファビオ・ヴィスコリオージ Fabio Viscogliosi
1965年、フランス・リヨン市郊外ウランに生まれる。リヨン在住。小説家として本書を含む3作品を出版するほか、グラフィック・アーティスト、漫画家、ミュージシャンとしても活躍している。1990年代初めから現在まで漫画本、絵本をコンスタントに出版。リヨン現代美術館(2009年)、モントルイユ公立図書館(2016年)等各地で作品展を行っている。音楽活動では2002年と2007年に自身のソロアルバムをリリースしたほか、他ミュージシャンとのコラボレーションや映画音楽、朗読BGMなど幅広く手がけている。
【訳者】
大林 薫 おおばやし かおり
青山学院大学フランス文学科卒業。フランス語翻訳家。訳書にコリーヌ・ルパージュ著『原発大国の真実 福島、フランス、ヨーロッパ、ポスト原発社会に向けて』(長崎出版/2012年)、共訳書にアドニス著『暴力とイスラーム 政治・女性・詩人』(エディション・エフ/2017年)、モーリス・ルブラン著『怪盗紳士アルセーヌ・ルパン 奇岩城』(角川つばさ文庫/2016年)などがある。
【モンブラントンネル火災事故】
「モンブラントンネル火災事故」は、1999年3月24日の火災発生から26日に鎮火するまでの3日間の惨事を指す呼称である。3月24日午前11時頃、トンネル内を通過中の冷蔵貨物トレーラーが燃料漏れにより爆発、たちまちトンネル内に火災が拡大する。激しい煙と高温のため多くの被害者はトンネル内シェルターにたどり着くことすらできず、結果、死者が39名に及ぶ大惨事となった。トンネルは事故後閉鎖され、修復と設備増強の工事、管理指揮系統の全面見直しと再構築を行い、約3年後に再び開通する。