新刊のお知らせです。
『核エネルギー大国フランス 「統治」の視座から』
セジン・トプシュ著、斎藤かぐみ訳、神里達博解説。 ISBN978-4-909819-05-5 2700円+税フランスは世界最大の核利用大国です。一時期は国内に170基の原子炉建設を計画していました。計画は見直されたものの、現在は58基が稼働し、国内総発電量の75%が原子力発電によるものです。原子力への依存度の高さは突出しています(日本は3割程度)。本書は、核利用を推進する組織の手練手管と、それに対して批判活動、反対運動を行ってきたさまざまなアクティヴィストたちの姿を入念な取材や検証に基づき論じたものです。民主主義を標榜する国家においても、こと核利用推進にかんしては、たくみに反対の声は押さえられ、かき消され、なかったようにかたづけられていきます。住民との対話は形骸化し、計画は結論ありきで進められていきました。
本書は、フランス国立学術研究所(CNRS)研究員のセジン・トプシュが博士論文として出版を検討していたもので、まさにその時に、日本は東日本大震災に見舞われ、福島第一原発の事故が勃発します。トプシュは福島について情報収集を行い論考を加筆し、2013年、本書はスイユ社から出版されました。
かねてからこの分野へ高い関心をもっていた翻訳家の斎藤かぐみさんから、本書の翻訳出版企画を打診され、エディション・エフは、フランスの核利用史と反原発運動史を論じたこの本は日本人にとって重要な参考文献になると考え、出版を決めたのでした。もとより膨大な資料、調査、取材に基づく本書は訳出だけでもたいへんな労を要しましたが、著者が日本について言及した箇所にかんしてはとくに入念な情報の裏とりが必要でした。ふだん大学教員として教壇に立つ斎藤さんにとって、そのための時間の捻出はただならぬことでしたが、成し遂げてくださいました。ただただ頭が下がります。
さらに、斎藤さんの旧知の研究者である神里達博さんが、本書を一般読者にとってぐっと身近なものにする解説を執筆してくださいました。千葉大学教授の神里さんとて講義と研究、執筆に忙殺される毎日ながら、本書のために筆を執っていただけたことは、エディション・エフにとって大きな喜びとなりました。
この日本語版には、原著にはない「日本語版のための序章」が所収されています。セジン・トプシュ氏が文字どおり日本語版のために書き下ろしてくださった渾身の一章です。フランスと日本が核利用にかんして驚くほど似た道を歩んでいることが論じられています。核にかんする「経験」には雲泥の差があるというのに、です。
核開発は環境を破壊し、生きとし生けるものの身体と精神を蝕みます。いつまでわたしたちはこの危険極まりない、とうていコントロールできない、とんでもないシロモノに依存し翻弄され続けるのか。
もっと、もっと、考えなくてはいけないんです。
本書はようやく流通に乗り始めました。取次にご注文くださった書店へは順次配本されていきます。弊社に直接ご注文くださった場合は来週から発送作業を行います。お待たせして申し訳ありません。取次JRCへの注文には【こちらの用紙 】 をお使いください。
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